私たち姉妹はルグランが大好き。
姉はピアノを弾くのが上手で、
私はそのピアノを聞くのが大好きな少女だった頃。
わが家にはラブサウンズというシリーズのピアノの楽譜本が揃っていて、
ほとんどが映画音楽なんだけど、歌詞のある物は、
日本語もしくはオリジナルの歌詞が書いてあって
母と私はピアノを弾いてくれる姉の横に立ち、
いつも3人で気持ちよく大声で歌っていた気がする。
今思うとそもそもが母の影響だったのだけれど、小学校低学年の私たちが酔いしれて歌うには
大人の愛を歌うものが多くて、思い出すと吹き出してしまう。
母はそういうことをあまり気にする人じゃなかったみたい。
彼女自身映画が大好きで、私たちにもどんどん見せてくれた。
ラブサウンズも姉が欲しがるままに全シリーズを買ってくれて、私たちは歌い続けた。
懐かしい。英語の歌詞には母がカタカナをふってくれた。いまでも口ずさめるものばかりである。
その中にルグランの『風のささやき』があった。
たぶん、私たちが初めてルグランを知ったのは、このラブサウンズである。
スティーブマックイーンが主演の映画『華麗なる賭け』(1968年)のテーマだ。
切なくて哀愁があるメロディラインに私たちは言葉通り酔いしれてしまった。
本格的にルグランを知るのはもっと後のことで、私は先にマックイーンにはまって
小中学生の間に代表作と言われるものはほとんど見ていると思う。
小学生の頃、下敷きに入れているのはマックイーンのブロマイドだった。
大脱走でファンになり、ゲッタウェイが一番のお気に入りだった。
中学生のころ母とシェルブールの雨傘をTVで見て、
母が大泣きしていたのを覚えている。
当時テレビで何度も見たサウンドオブミュージックとは全然違う。
こんなミュージカルがあるんだと衝撃的だった。
なにより、ジャック・ドゥミの描く鮮やかな色彩にやられてしまい、
ルグランよりドゥミに魅せられてしまった。
ドゥミを追いかければ追いかけるほど、ルグランに詳しくなった。
彼の映画のほとんどの音楽がルグランだったからだ。
そこから、ルグランにもはまってしまった。
初めてルグランを生で聴いたのは1996年。
森山良子さんとの共演だった。その年の7月にカーネギーホールから始まった
彼女の30周年記念コンサートツアーの東京公演を、姉と聴きに行ったのだ。
当時、ルグランが64歳で、今回が最初で最後のコンサートかもしれない!
なんて言っていた気がする。
15年も前のことだ。
今年、ルグラン御年79歳!
ステージ前半から、ピアノも歌も全速力。
すごいパワーだった。
ルグラントリオでの来日だったので、ドラムとウッドベースとピアノ。
ドラム側の席だったので、ドラムの背中越しにピアノを弾くルグランとは対面に♥
ドゥミ監督映画の『ローラ』のテーマ曲から始まって、
あぁ。ローラの舞台が見たくてナントに行ったなぁとか思い出したり。
青春時代がフラッシュバックしちゃったなぁ......
もちろん風のささやきも演ってくれて。甘美なメロディーに酔いしれて。
アンコールはシェルブールの雨傘を!
タンゴ風、ワルツ風、ニューオリンズ風......と、どんどんアレンジを変えて
演奏してくれた。大興奮〜!!
素敵な夜はあっという間に終わってしまう.....
またいつか聴きに行けるといいなぁ。
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